事業の背景
EUでは2021年7月に、CO2を排出するガソリン・ディーゼル車(ハイブリッド車含む)の新車販売を2035年に終了する方針を発表しました。日本でも、2030年時点でCO2排出削減を2013年度比で46%にするという政府目標が掲げられ、CO2 排出量の約20%を占める運輸部門の中でも、特に大型商用トラックの CO2 削減は喫緊の課題となっています。
内燃機関(エンジン)は近代産業の発展に不可欠な動力源として長年に亘り最適化されてきた技術ですが、化石燃料がもたらす排出ガスによる環境劣化への懸念が近年増大しています。自動車業界では、脱化石燃料のソリューションとして、電動モーターを動力源とするEV、FCV (燃料電池車)の開発・実用化が乗用車部門を主体に進められています。そしてこの流れを受けて、内燃機関自体のグリーン化は市場において見逃されていますが、私たちは水素内燃機関も選択肢の一つだと考えています。
内燃機関は高い出力を持続的に必要とする重量トラック・トレーラー、船舶、重機、発電機等、乗用車以外の多くの市場分野に様々な環境条件に適応しながら貢献している基幹技術であり、それぞれの市場は多くの人達によって支えられています。
また、一つ一つの分野の市場は巨大な乗用車市場に比べれば小規模ですが、これらの分野が現在排出している地球温暖化ガスの総量は、全乗用車からの排出量の1.5倍(日本の場合)に及びます。ちなみに日本における積載量4トン以上のトラックの保有台数は150万台以上、乗用車に比べ1台当たりのCO2排出量が大きいのが現状です。
私たちの取り組み
既存商用トラックの「水素化コンバージョン」により、排出されるCO2をゼロにすることは脱炭素社会の早期実現に大きく貢献していきます 。
また取り組みの一つであるISO(国際標準化機構)による環境マネジメント として 規格が進むライフサイクルアセスメント (LCA=Life Cycle Assessment) は、製品のライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)の環境負荷を定量的に評価する手法であり、国内主要企業の多くがCSR(社会的投資責任)報告書などで取り入れています。水素化コンバージョンは、既存車両 の改造であるため車両製作の過程で発生するCO2量を大幅に削減できLCAの観点からも有効な技術となります。
さらに、水素化コンバージョンは、高い技術を有する自動車整備工場に標準化された技術を提供することで日本の強みであるエンジン製造の雇用維持がなされ 、整備事業の継続と発展に貢献することになります。
実現する方法
水素内燃機関を搭載したトラックや重量機器を普及させるには、需要を増やすことでの原料となる水素コストの低減は言うまでもなく、大量の燃料消費が見込めるトラックターミナル設置のB to B型水素ステーションが稼働率向上の鍵を握ると考えています。そこで弊社では水素燃料によるトラック運行の経済受容性が見込めるコストモデルの確立を目指します。